レビュー詳細
印象カラー:
曖昧
ミ缶
投稿日:2025/11/23
本のタイトル
仮面の告白
著者名
三島由紀夫
出版社
新潮文庫
発行日
1950年06月25日
ISBN
9784101050409
あらすじ
三島由紀夫の性的自伝小説。 少年「私」は、血に塗れた死を憧憬しつつ女に魅力を感じない自らの性的指向に煩悶する。 やがて女性との交際を通して「普通」を装うが、自分の内面との乖離と苦しみは深まるばかり。 最後に「私」が従うのは、社会への適応か、破滅的な美学か。
レビュー本文
この本は卒業論文で扱った思い出深い一冊です。 教授に「自分がわからないと思う本を選びなさい」と言われ、この作品を選びました。 幼少期から、普通になりたいのになれない「私」があがいている様は、共感できるようでできません。「私」の性的指向はあまりにも特殊で、私は死の運命にある男に興奮するといった経験はないからです。 しかし、「私」の心の揺れ動きを追っているうちに、理解できないはずの感情が、なぜか理解したいものへと変わっていきました。自分の「普通」とは何なのか、他人に合わせて演じている自分と本当の自分はどこまで一致しているのか――読んでいる側まで問いかけられるような感覚があります。 かなり全体の描写は刺激的で、正直万人におすすめできるような作品ではありません。 それでも一度読んだら忘れられない、そんな力のある小説でした。